理事長挨拶
平成の時代から令和の時代になりました。我が国をめぐる情勢は国内・国外ともに大きく変化をしつつあります。こと国内・それも医療関係に限って見ても大きな変化の時代となっています。この中で静かであっても確実にそして最も大きな変化は高齢化と人口減少であることは疑問の余地がないと思います。この中で医療においては高齢化による疾病構造の変化が否応なしに進行してきています。その一つに高齢化による動脈硬化症の進展と、食生活の変化による肥満と糖尿病の増加があります。これに最近の医療の進歩による悪性腫瘍に対する化学療法や診断技術の進歩に伴う薬物性腎障害の増加が加わり、腎疾患は右肩上がりで今も増加しています 。
こうした中に、慢性腎不全はより早期から多くの疾患の誘因になることから慢性腎臓病(CKD : Chronic Kidney Disease)というより広く早期の概念に移行し、命に直結する重篤な疾患である急性腎不全も急性腎障害(AKI : Acute Kidney Injury)という概念に変化しています。これらの意味は、重篤な腎疾患に対し先制的に対応策を練り対策を行うことと思われます。これが腎疾患を有する人々が重篤な腎疾患に陥ることを未然に防ぎ、ひいては予防策まで考えていこうということに他なりません。しかしながら、日本の医療は国民皆保険という素晴らしい医療制度を有していますが、どうしても医療経済の縛りから重篤化した腎疾患患者の治療が優先となっています。このため先制医療や予防医学に割く科学的な資源は限られているのが実情です 。
和歌山県においては、腎疾患医療に携わる人的資源自体に限りがあり日々の重症化した慢性腎不全・急性腎不全に対し正しい対応策を行なっていくことに追われている状況です。他の都道府県以上に高齢化が進展しつつある和歌山県においては、腎疾患に先制医療や予防医学に割く人的資源・科学的資源・経済的資源が不足しているのが実情です。しかしながら、日本の中でも高齢化が進みつつある代表的な県である和歌山県においては、より腎疾患に先制医療や予防医学に割く資源を確保する必要があります。このような意味から、広く和歌山県を中心とした社会的な資源の集約と活用ならびに支援を目的として平成26年6月2日に、かつての和歌山透析研究会が有していた資金を原資にして一般財団法人和歌山腎臓財団を立ち上げました。これにより、以下のような目的を掲げ活動しています。是非とも和歌山腎臓財団の存在をご周知いただき、ご支持とご支援をいただきたくお願い申し上げます 。
一般財団法人和歌山腎臓財団理事長 重松 隆
目的
この法人は、腎疾患並びに関連疾患とその合併症に関する病態解明や治療および血液浄化療法に関する調査研究を行い、もって和歌山県民を中心に民の健康及び福祉の進歩向上に寄与することを目的とするものであり、その目的を達成するために事業を行う。
令和2年1月6日
一般財団法人和歌山腎臓財団理事長 重松 隆