糸球体腎炎とネフローゼ症候群

腎臓病(に限らずですが)には、一次性(原発性)と二次性があります。

二次性とは、他の病気で腎臓が悪くなるものを言います。厳密には、腎臓病ではないので、元の病気を治療することが優先されます。代表が糖尿病です。糖尿病からの腎臓病で透析をされている方が多いですが、糖尿病は膵臓からインスリンの分泌が適切にできなくて、血糖が上がり、腎臓や目が悪くなります。対して一次性(原発性)は腎臓そのものの病気になります。

それでは、ネフローゼ症候群などに使う「症候群」とはなんでしょうか? 症候群とは、ある一定の基準を満たした場合につけられる名前です。ネフローゼ症候群の基準は、尿蛋白が1日3,5g以上と血液中のアルブミン濃度が3.0g以下です。つまり、物凄い蛋白尿が出ていて、その蛋白の中身はアルブミンが主なので、血液中のアルブミン濃度が下がってしまします。これがネフローゼ症候群で、原因となる疾患は多数あります。糖尿病からのネフローゼもあれば、糸球体腎炎によるネフローゼもあります(医学用語は難しいですね)。

では、本題の糸球体腎炎です。腎臓は原尿を作る糸球体という部分と作った尿を運搬して尿管・膀胱に運んでいく尿細管間質の部分に別れます。この糸球体に炎症が起きるのが、糸球体腎炎。尿細管に炎症が起こるのが尿細管間質腎炎です。今、話題の紅麹が原因となっているかもしれないと言われているのは、尿細管の方の病気ではないかと考えられています。

実は尿細管の病気は比較的少なく、患者さんの数は糸球体疾患の方が圧倒的に多いです。その糸球体腎炎ですが、こちらも総称になります(医学用語はほんとに難しいですね)。糸球体腎炎を起こす病気としては、IgA腎症、膜性腎症、巣状糸球体硬化症など数十種類があります。これらは、腎生検と言って腎臓の組織を取ってこないと最終的に診断がつかない病気が多いんです。腎生検は入院の必要な大きな検査になりますが、診断の確定には必要な検査になります。糸球体腎炎の原因の疾患、例えばIgA腎症と診断がついて、いよいよ本格的な治療になります。糸球体腎炎は自己免疫疾患、つまり、ウイルスやバイ菌で侵される病行ではなく、自分の免疫の狂いにより自分で自分を攻撃しているような状況の病気が多いんです。必然的に免疫を下げる薬、代表格はステロイドになりますが、免疫を抑制する薬での治療が多くなります。もちろん、個々の疾患で治療は異なりますし、同じ病気でも早期で見つかった人とかなり進行して見つかった人では治療法が違ってきます。病院で腎臓内科の先生とよく相談するようにしてください。

急性腎障害

急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)は、腎臓が極短期間にその機能を失い、体内の毒素や余分な水分を適切に処理できなくなる状態を指します。典型的な症状には、尿の量が極端に少なくなること、全身のむくみ、疲労感、吐き気が挙げられます。この症状は数時間から数日の間に急速に進行することが特徴です。主な原因としては、重度の脱水、重い感染症、あるいは過度な血圧低下などの腎臓への血流が大きく低下する状態の他、薬剤の副作用などがあります。早期に適切な治療を施すことで、腎臓の機能は回復する可能性がありますが、症状が重い場合や治療が遅れた場合には、一時的に血液透析が必要になったり、腎臓に障害を残したりします。

急性腎障害は、発生を未然に防ぐために、脱水を避け、医師の指示に従って薬を正しく使用することが重要です。また、持病がある場合は定期的な受診を行うことで、リスクを管理することができます。

慢性腎臓病

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、数か月から数年の経過で徐々に腎臓の働きが悪くなり、老廃物や有害な物質、余分な水分などが体内に蓄積してしまう状態です。

CKDの原因は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、腎炎などがあり、誰もがかかる可能性のある病気です。日本では約1,330万人(成人の約8人に1人)がCKDであると考えられ、新たな国民病ともいわれています。初期には自覚症状がありませんが、腎機能障害が進行すると、倦怠感、貧血、むくみ、息切れなどの症状が現れてきます。

塩分制限や蛋白制限、カリウム・リン制限等の食事療法、原因疾患の治療、血圧管理など個々の状態に応じた薬剤調整、禁煙や適切な運動などの生活指導などによってCKDの進行を遅らせることができます。

CKDは、血液・尿検査、超音波やCTなどの画像検査で診断が可能であり、健康診断やかかりつけ医で早期診断し、状況に応じて腎臓専門医と連携して適切な治療を行う事でCKDの進行を防ぐ必要があります。

残念ながらCKDが進行し、末期腎不全に進行した場合には、症状が強くなるため、体内にたまった老廃物や水分を除去するために腎代替療法が必要となってきます。腎代替療法として透析療法(血液透析と腹膜透析)や腎移植といった治療選択肢があります。最近では、多くの医療機関で腎代替療法について、十分な時間をかけて説明を行い、腎代替療法決定の決定支援を行うための外来が設けられています。

血液透析

血液透析(Hemodialysis :HD)は、腎臓の機能が損なわれて毒素や余分な水分が体内に溜まってしまった場合に、不要な物質を除去するために行う治療法です。血液を体外に取り出し、透析膜と透析液を用いて清浄化した上で、血液を再び体内に戻します。治療は通常、週に3回実施され、1回の治療時間は4~5時間です。血液透析は、生活に大きな影響がありますが、適切な管理と定期的なフォローアップによって、質の高い生活を送ることが可能です。

血液透析にはバスキュラーアクセスという、血液を取り出すための経路が必要になりますが、その血管のことを「シャント」と呼んでいます。シャントは通常、腕の動脈と静脈を手術で繋ぎ、透析に必要な量の血液が流れるようにします。しかし、シャントが狭くなったり詰まったりすると、血流が悪化するため、その場合は経皮的血管形成術(Percutaneous Transluminal Angioplasty:PTA)などの手術を行います。

腹膜透析

腹膜透析(Peritoneal Dialysis : PD)は、腎臓の機能が損なわれて毒素や余分な水分が体内に溜まってしまった場合に、不要な物質を除去するために行う治療法です。腹腔内に透析液を一定時間貯留し、排液し、交換することで、腹膜を用いて透析を行う方法です。1日3-4回の透析液交換を行うCAPDや夜間就寝中に機械で自動的に交換を行うAPDがあります。自宅で行う治療であり、基本的に治療は毎日ですが、時間の融通などライフスタイルに応じた治療が可能です。病院への通院は月に1-2回程度となります。自宅で行う治療に不安な方(高齢者など)は、訪問看護師のサポートを受けながら、治療を行う事も可能です。

また、PDでの透析の効率が低下してくると、週に1回の血液透析(HD)を併用するPD+HD併用療法を行うことができます。

腹膜透析には、腹腔内に透析液を貯留するために腹膜透析カテーテルを留置する手術が必要になります。また、カテーテル出口部の自宅でのケアも必要となります。

腎移植

腎移植は、腎臓の機能が失われた時に新しい腎臓を植える治療法で、生体腎移植と献腎移植の2種類があります。生体腎移植は、生きている人が2つある腎臓のうちの1つを患者(レシピエント)に提供する方法で、親族や配偶者が臓器提供者(ドナー)となるのが一般的です。献腎移植は、脳死や心停止後の人がドナーとなる場合で、移植を待っている患者に対して実施されます。腎移植を受けるために、患者とドナー双方が詳細な検査を受け、血液型や組織の適合性などが検討されます。通常このプロセスは時間がかかりますが、献腎移植の場合は極めて短時間で行われます。移植が行われた後は、拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を服用し続ける必要があり、異常の早期発見早期治療のために定期的な受診を行います。

腎移植は患者と医療チームとの緊密な協力が必要とされますが、透析治療と比較して、より自由な生活を送ることが可能であり、生命予後や生活の質を向上させる選択肢です。